"ロシアのスパイ" として注目のベルーガ(シロイルカ) 野生では暮らせない可能性があり救出プランも検討中

2019年4月、装着帯をつけられたシロイルカベルーガ)がノルウェー北部の海に現れたことが話題になりました。

 

 

このベルーガがどこから来たのかを特定できる材料はほとんどないようですが、ロシア海軍に訓練されていたベルーガが逃げ出したもの、という見方が強まっています。

 

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ベルーガは装着帯を外されて海に返されましたが、その後も同じ付近を泳ぎ続けていました。

 

数週間後、このベルーガのいるあたりにボートで近づいた人たちが、思わぬ経験をしました。

 

ボートに乗っていた人の一人がジャケットのポケットを閉め忘れており、入れて置いたスマホを海に落としてしまったのです。 普通こうなってしまったら、あきらめるしかありません。

 

しかし、例のロシアから来たと思われるベルーガスマホを加えて海面に現れ、届けてくれたのです。

 

 

「みんな本当に驚きました。目の前のことを信じることが出来ませんでした。すごくハッピーですし、スマホが戻ってきたことに本当に感謝しています」。

 

もちろん、水中に一定時間浸かっていたため、このスマホは使えなくなっていました。 それでも持ち主は人と動物との予想外の交流に大きな喜びを感じていたようです。

 

 

 

【群れから引き離されたベルーガ

もしロシア軍に訓練されていたということが本当であれば、このベルーガは野生のベルーガと比べて、人に対する抵抗がきわめて小さくなっていると考えられます。人が落としたスマホをくわえて、それを人のいるところに自分から近づいて行って届けるというのは、野生動物の自然な行動ではありません。

 

装着帯を外されてからも、数週間でわずか46kmほどしか移動していないことも分かっています。

 

また今でも(人の落とし物とは関係なく)、このベルーガは自分からボートに近づいて行って、人に頭をなでてもらうのを楽しんでいるようです。 このベルーガが装着帯をつけていることが分かったのも、ベルーガの方から執拗にボートに近づいてきたためおのずと発見されたのでした。

 

海で暮らす動物がボートのエンジン音を怖がらないこと自体が、奇妙なことです。

 

専門家たちは、ベルーガが人のいる場所から離れようとせずむしろ近づくというのは、少なくとも野生の行動としては不自然だと述べています。 一方で、ふつうならば警戒心を強める場面であっても、もし自分が孤立していると感じると、周りのものに従う傾向もあるそうです。

 

ベルーガは群れを成して暮らす動物で、ベルーガ同士で強い社会性を持っています。1頭だけで孤立して海のなかを泳ぎ回るような状態になったため、その埋め合わせをするように自分からボートに近づいて人との接触を楽しんでいる、という可能性も考えられるでしょう。

 

ベルーガ救出プランも検討中】

心配なのは、このベルーガが人に慣れすぎてしまっていて、逆に野生で暮らす能力が衰えてしまっているのではないか、ということです。

 

カナダで過去20年間にわたって、群れからはぐれたクジラ類についての研究をしている専門家は、とにかくこのベルーガがボートに接近しすぎてケガをすることが心配だと述べています。同時に、このベルーガは明らかに人の手で長期間にわたって飼育されてきているため、人から餌付けされないと生きていけない可能性があることも指摘しています。

 

ノルウェー当局では、このベルーガを救出するプランを検討しているということです。 プランのひとつとしてアイスランドにある保護区に移送するというアイデアが出されている、と報じられています。

 

本当にロシア軍が捕獲・飼育していたベルーガなのかは分かりませんが、この1頭がこういう特殊な状態に追い込まれたのは人がやったことが原因です。やはり最後まで責任を持ってケアをするのも、人が負っている義務なのだろうと思います。

 

 

 

Nice Whale Returns Phone Woman Accidentally Dropped Into Sea - The Dodo

Alleged Russian spy whale is refusing to leave and is seeking Norwegians’ attention, authorities say - The Washington Post